クライミングの楽しさ、あるいはなぜクライミングに飽きないのか

「クライミングの楽しさってなんですか?」

ヤフー知恵袋に、「クライミングをやってみたいけど、クライミングの楽しさってなんですか?」みたいな質問があった。

そんなことは、果たして人に質問して教えてもらうことなのかどうか、という気も少しするのだが、それが知恵袋というもの。

しかし、それをきっかけに、自分にとってのクライミングの楽しさというのは何か、ということを考えてみた。

「登れれば嬉しい」のは、なぜなのか?

ジムでも、外でも、ある課題を完登すれば嬉しい。しかし、その「嬉しさ」というのは、何によるものだろう? 皆さんは、どう思いますか?

対戦相手がいるスポーツ、相撲でも卓球でもいいが、これは人と競って相手に「勝つ」ということの喜びがあるだろう。勝てば嬉しい、負ければ悔しいという気持ちが、だれにでもある。

しかし、クライミングやボルダリングは基本的に人と競うものではない。
もちろん、人と勝ち負けを競うクライミング(「スポーツクライミング」競技)はあるが、それは広いクライミングの中のごく一部にすぎない。
また、トップレベルのクライマーは知らないが、ファンレレベルのクライマーなら、たとえコンペに参加したとしても、だれかと競って「勝つ・負ける」ということを意識していないように思う。

できなかったことができるようになる嬉しさ

たとえば、マラソン大会ではタイムがあり、順位が付くわけだが、ほとんどのアマチュアランナーにとって、タイムが気になるのは、あくまで過去の自分との比較においてであり、他人とタイムを比較して「勝ち負けを競う」という意識は非常に小さいだろう。

ランナーが、過去の自分を少しでも超えようと、タイムの向上を目指すのに似て、クライマーはグレードの向上を目指す。
自分が登れたグレードが上がれば嬉しいし、上がらないと悔しい。それは、自分の「成長」が感じられるか否かということである。
(クライミングのグレードはマラソンにおけるタイムのように客観的なものではないという問題はあるが、グレードの話は、ここでは深入りしない。)

しかし、それは単に「数字が上がった」というだけのことではない。
仕事の内容が変わらないのに給料だけが増えたら、嬉しいと思うだろう。しかし、そのようなものと同じように、クライミングの内容が変わらないのにグレードの数字が増えれば嬉しいかというと、少なくとも自分の場合は違うと思う。

成長というのは、言い方を変えれば「できなかったことが、できるようになる」ということだ。この「できなかったことが、できるようになる」ことが、小さいレベルでたくさん、そして無限に感じられることが、クライミングの楽しさ、魅力なのではないだろうか。

身体を完全にコントロールできる快感

「意識と身体」という言葉で考えてみる。
まず、意識がイメージを持っている。たとえば、ランジであのホールドに飛びつく、というイメージだ。ところが、イメージはあるのに、その通りに身体が動かない。意識通りに身体がコントロールできないのが、不快である。
だが、何度も練習を重ねるうちに、イメージ通りに身体をコントロールできるようになる。これが、快感である。イメージ通りに身体を動かせる気持ちよさがある。

あるホールドが持てない、あるムーブができない。それが何度も繰り返すうちに、今までは持てなかったホールドが持てるようになる、できなかったムーブができるようになる。
自分の場合は、この「イメージ通りに身体を動かせる快感」が、クライミングの楽しさの中心なのかなと感じる。
そして、1本のルート(課題)という単位で見たとき、その最初から最後まで思い通りに体が動けば、結果的に「完登」がついてくるという感じだ。

だから、最初の問いに戻って、「完登」の嬉しさが何によるのかと言えば、それはつまり最初から最後まで、完全に身体をコントロールできた嬉しさだと言える。
言い換えると、完登もグレードもあくまで結果で、本質的なことは、体を自分のイメージ通りに動かせたかどうかである。

クライミングのホールドやその配置は無限の組み合わせがあり、ムーブも無限にある。だから、できないムーブも無限であり、それを習得する喜びも無限である。

これが、たいしてグレードも上がらないのに、クライミングをいつまでも飽きずに続けている理由ではないかと思うのだ。

ムーブ本質論に……?

しかし……。
この論立てだと、ムーブこそがクライミングの本質だというムーブ本質論になってしまうのだが、これでよいのだろうか……。(冒険性というクライミングに欠くべからざる要素も、ムーブに対する補助的な要素と見なされるようだ)。

クライミングの本質は、ムーブか?冒険か?

クライミングの本質は、ムーブか?冒険か?

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