激安ハイフリクション(?)シューズ「ハイパーV」は沢でも使えるか?

ハイパーVとは?

先日の大若沢では、愛用のフェルトソールの沢靴が見つからないという事情があったからだが、「ハイパーV」を使ってみた。
ハイパーVは、日進ゴムというメーカーが開発した「ハイパーVソール」というゴムを使ったシューズである。

ちょっとややこしいが、ソール(靴底)の名前が「ハイパーVソール」で、それを使ったシューズの名前が「ハイパーV」だ。

ハイパーVは工場などの現場作業や油を使う厨房用に開発されたもので、「滑りにくさ従来の2.5倍」の「驚異のグリップ」がメーカーの宣伝文句である。現場仕事の業界では、そこそこ有名らしい。

作業用なので、つま先が鉄芯で保護された作業靴タイプのものもあるが、普通のスニーカータイプもある。
私が持っているのは、スニーカータイプで、#003という型番のものだ。2年程前にホームセンターで買った。値段は3,000円強くらいだったと思う。安い。専用の沢靴や、アプローチシューズなどと比べて、3分の1くらいの価格だ。

ハイパーVソール

ハイパーVのソール。このパターンデザインも、重要らしい。

ハイパーVのつま先

ラバーが先端まで覆い、クライミングへの対応を思わせる

上の写真は実際に自分が履いているものなので、汚なくてすみません。

写真でもわかるかもしれいないが、作りは非常に安っぽい。
なんというか、全体にぺらぺらした感じで、腰がない。上部は薄いメッシュで風通しがよく、冬に履くにはかなり勇気が必要だが、夏には涼しくていい。まあ、作業仕事で使う消耗品と考えれば、これで必要十分なのだろう。

フリークライミングのアプローチなら必要十分

自分はファイブテンやスカルパなどの専門メーカー製のアプローチシューズは(高いので)買ったことがないので、それらと比べることはできないが、フリークライミングのアプローチに使うには、ハイパーVに大きな不満はなかった。岩場でのフリクションもよく、アプローチシューズとしては十分である。
ただ、アッパーのメッシュが粗いので、乾いたところでは砂が入り込むことには閉口したが。

それで、沢にも使えるのではないかと思っていたのだ。

何を重視するかによって、沢シューズのチョイスは変わる

沢登りでは、踏み跡歩きから、濡れた岩の登攀、草付きの壁の登攀など、さまざまな状況が出てくる。さらに、行き帰りのアプローチもある。特に、尾根まで詰める場合、下山が意外と大変なことがある。
一足でそれらのすべてを最適にこなせるシューズは存在しないため、シューズ選びは、なにを重視するかによって決まる。

モンベルや秀山荘などで販売しているフェルトソールのシューズや沢タビは、濡れた岩でのフリクションは良い。濡れた滝の登攀に焦点を当てるのなら、フェルトソールが良いと感じる。
ただし、行き帰りのアプローチシューズとしては難があるため、替えの靴を持たないといけない。荷物が増える。

ファイブテン社がかつて発売していた「アクアステルス」をはじめとしたラバーソールは、苔がついている岩では、フェルトソールに比べてフリクションは弱い。しかし、アプローチや草付きでも、そこそこ使えるから、替えを持たなくてもよいのがメリットだった。
(ちなみに、ファイブテンはアクアステルスの販売をやめてしまったので、今はこのソールのシューズはもう入手できない。)

沢でのハイパーVは、難ありだった

さて、実際に沢ではじめて「ハイパーV」を使ってみたところ、たしかに普通のスニーカーに比べれば、フリクションは良い。濡れた岩でも、苔さえついていなければ、まあまあグリップする。
しかし、苔のついた岩では、まったくと言っていいほどグリップしない。つるっつるである。

私がアクアステルスのシューズを使っていたのはだいぶ前なので、正確ではないかもしれないが、明らかにアクアステルスより劣ると感じた。
つまり、フェルトと比べると天と地ほど違う。
少し難しい滝になると、この靴では怖くて、登攀できなかった。

値段が値段なので、そこまでの性能を求めるのは酷かもしれない。

また沢の質によっても変わるだろう。それほど滑る苔のない沢もあるので、そういう沢で使うなら悪くないかもしれない。
岩質との相性もあるだろうし、1度だけの使用ではなんとも言えないところがある。

しかし、滝の登攀をメインに考える場合は、やはり不安が大きい。そういう沢行では、フェルトソールの靴を持っているのに、わざわざこれを履いていこうという気にはならないと思う。

ちなみに、意外なメリットとして、上述のように、ぺらぺらの安っぽい作りのため、水はけがよく、乾きやすいのは助かった。帰りに温泉に寄ったとき、車の外の日向に1時間ほど置いておいたら、ほとんど乾いてしまった。

結論

・苔のついた岩には無力。濡れた滝の登攀をメインとする沢行に使うには(フェルトと比べて)厳しい。
・苔のない沢、登攀が少ない沢で、荷物を減らしたい場合は、この1足でアプローチも含めて対応可能。
・乾いた岩場でのアプローチシューズには、十分使える。
・アウトドアメーカーシューズの3分の1以下の値段は素晴らしいの一言!

おまけ

Youtubeにはこんな動画もありました。