祝!『OLD BUT GOLD』刊行

本記事の目的は、うちの猫たちのかわいい姿を載せることです。
したがって、以下は蛇足なので読む必要はありません。

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すでに多くの方がご存じだと思うが、杉野保氏の『OLD BUT GOLD』が刊行された。

今年、不幸な事故で亡くなった杉野保氏は『Rock & Snow』執筆陣随一の名文家だった。

同誌に杉野氏が連載していた「OLD BUT GOLD」「Dig It」は、一流のクライミング随筆であり、また日本のフリークラミングの歴史を後世に伝える上での一級の史料でもある。

その雑誌連載の終了後(もう10年以上前になる)、当然、すぐに単行書としてまとめられて刊行されるものとばかり思っていたが、一向にそうなる気配がない。
その点について、本ブログでも指摘したし、SNSでもたびたび『Rock & Snow』誌編集部の不見識を批判していた。下記のエントリを書いたのは5年も前だ。

杉野さんの昔の連載、モンベルがまとめないかな?(https://seeyou44.exblog.jp/21640311/)

今回、ようやく、というべきだろうが、「OLD BUT GOLD」「Dig It」が一冊の書籍としてまとめられ上梓された。非常に喜ばしいことだが、遅すぎたという気もする。もし、長らく放置されていたこの出版の実現が杉野氏の急逝を契機としているのだとすれば、とても複雑な気持ちだ。

本書のあとがきには、編集者である北山真氏が、杉野氏が亡くなる前から本書の企画は進んでおり、この本で杉野氏自身が開拓したルートの再登をしてもらう「隠し球」書き下ろし企画があったが、それが実現できずに残念だという旨を書いている。

だが、その言い訳めいたあとがきは、かなり読後感が悪い。そもそも、「OLD BUT GOLD」の連載が終了したのは10年以上前だ。その間、本書をまとめずになにをしていたのか。10年もその「隠し球」とやらを温めていたというのだろうか? もしそうであるなら怠惰にもほどがある。

そして、「あとがき」の内容もたんなる内輪話で、読むべき価値はまったくない無駄なページだ。こんな「あとがき」をつけるくらいなら、それぞれのルートが現在(2020年時点)にはどうなっているのか、その最新情報をまとめて載せるとか、あるいは他のクライマーから見たルートへのコメントを載せるとか、まともな編集者ならそういう仕事をするはずだ。編集者の無能、あるいは手抜きが、残念でならない。

ついでにいうと、これはコストとの兼ね合いなのでやむを得ない面もあろうが、写真が白黒なのも少し残念だ。少し定価が高くなってもいいから、カラー写真にしてほしかった気もする。もとの迫力あるカラー写真を堪能したければ『Rock & Snow』のバックナンバーを入手したほうがいいかもしれない。

多少の不満はあるが、それでも本書が刊行されたこと自体は素直に喜ばしい。連載時に愛読していた方はもちろん、杉野氏の記事を読んだことのない若いクライマーにも強くお薦めできる。

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